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俺、知っているぞ。この想い
あれから2日に1度は竜樹がいるこの島に、最初の頃は1~2時間、最近では3~4時間滞在している。
竜樹と出会って、1ヶ月半が経とうとしていた。
陸に上がるときは「人魚姫ごっこ」が定着し、事なきを得ている。
キスを繰り返す度、足の痛みや息苦しさは軽減されていき、人間に近づきつつあるのではないかと心配になってきた。
『次、海に入った時に人魚に戻れなかったらどうしよう』
今のところはそういった事はなく、海に潜り人魚に戻れば普通に海の中で生活が出来る。
竜樹は、島でギターを弾き、海のごみを俺と一緒に拾い、料理をし、時々パソコンで何かを打ち込んでいる。
「小説家なのか?」と聞いたが、違うらしい。
竜樹のギターに合わせて、俺が歌う。
俺が知っている曲を教えると「古い曲ばかりだな」と笑った。
食材は週に1度、本土の方から知り合いがクルーザーで運んでくるらしい。
出くわさないようにしなくては…。
一度、俺の分の食事も準備してもらったが、結局味付けのないサラダしか食べられなかった。…人間の味付けは人魚には刺激が強過ぎたらしい。
竜樹が何から逃げて、ここに居るのかはわからない。
そして、いつかは本土に帰ってしまうこともわかっている。
でも、ずっとこんな日が続けばいいと思う自分に最近気がついた。
俺は、竜樹が好きだ。
男とか人間とかどうでもよくて、竜樹自身が好きなんだ。
会いに行けない日は無性に会いたくなる。
会いに行けば、離れがたくなる。そして、会えなくなる日が怖くなる。
今は前世と違って…写真も画像も無いので、会える日が本当に大切に思えてくる。
最初、島への滞在は2,3か月と言っていたが、今もその予定なのだろうか。
確認するのが怖いけど、急にいなくなるのも…嫌だ。
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