雨宿り

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雨宿り

「雨が本降りになる前に帰れよ。陸を歩いていくにも危険だから…」  窓の外をみると、大粒の雨が窓を叩き始めた。  俺にとってはこのぐらいの雨でも平気で泳いで海の底に帰れるが、そういう設定ではないから、仕方がない。  いつも突堤まで送ってくれる竜樹が足を滑らせても危険だしな。 「あぁ、また明後日…いや、明日も来ていいか?」  今日はまだ1時間くらいしかここに居ない。会えるうちに沢山会いたい。  今だけ、竜樹を独り占めしたい。  恨めしそうに外を見ていると、竜樹が背後に立っていることに気がついた。  そして俺を後ろから抱きしめ、耳もとで「泊まって行くか?」と囁いた。  やばい。それを聞いた瞬間、俺の心臓が打ち上げ花火を連発しているかのように、大きく鳴り出した。 「…黙るなよ。これから雨が酷くなるみたいだし、今日の夜中には止むって予報が…」  焦る竜樹の腕を、ぎゅっと握りしめた。この腕を離さないでくれ、と言わんばかりに。 「…このまま、今夜はここに居ていいか?」震える声で尋ねた。 「お、俺は構わないが…家族が心配するだろう。海岸沿いの道で、送って行くよ」俺から離れようとする竜樹の腕を、しっかり掴んだ。 「大丈夫。放任主義だから…俺も、もう20歳だし」  本当は、エレナはめちゃくちゃ心配性だ。  朝まで帰らなかったらきっと、外出禁止は決定だ。  だけど…今はまだ帰りたくない。人間のままでいたい。
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