雨宿り

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 ビーチから海に飛び込んだ。  しかし、足が人間のままどころか…耳の下のエラが無くなっている事に気がついた。  それなのに水の中でエラ呼吸をしようとしたものだから、溺れるかと思った。  どうしよう、帰れない。  とりあえずビーチに上がり、1人たたずむ。  濡れたためか、不安のためか、恐怖のためか…急に身体が震えてきた。  人魚の時は暗闇でも波の音も風の音も怖いと感じたことはなかった。  突堤の先端まで走り、人魚の声でエレナを呼ぶ。  良かった、声は出る。 『エレナーー!!』  人間がこの声を聞いても、動物が叫んでいると思うだろう。  何度か繰り返し叫んでいると、遠くから俺を呼ぶ声がした。 『エレナ!俺はここに居るー!』  3分も経たないうちに、エレナが海面から顔を出した。 『エレナ!エレナ!どうしよう。人魚に戻れない!』  そう叫んだ俺は、エレナの表情が今まで見たこともないような険しい顔で俺を睨んでいることに気がついた。  エレナはきっと、俺が人魚に戻れなくなった理由を知っているんだ。 『エレナ…ごめん、なさい…』  エレナは少し表情を緩め、冷ややかな声で言った。 『…まだ完全に人間にはなっていないようね。なら、まだ間に合う。…その人間を殺していらっしゃい。その血肉を食べたら人魚に戻れるらしいから。じゃ、早く戻ってきてね。あと、人魚の涙の話、絶対忘れちゃだめよ』  エレナはそのまま暗闇に消えていった。  エレナのその言葉に従って、俺はコテージに戻った。
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