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誕生
「ぷっはぁ!」
息が、出来る。
俺、生きてる!
しかし辺りが真っ暗だ。
何か布団のようなものを頭から被っている。
ひょっとしてここは病院か?
そっと被っている物から這い出た。
這い出ても薄暗いことには変わりなかったが、ここは、ここは…
海の中だーーーーー!
海藻がゆらゆら揺れ、海上からの日差しがわずかに入る。
遠くで、魚の群れが軍隊のように規律正しく進行している。
海の中でなんで息が出来るんだ?
ピクピクッと両耳の下の皮膚が動いた。
そっと触ると、エラのようなものがあった。
え?俺、魚に生まれ変わった?
「あら、生まれたわ」
キレイなおねえちゃんが海藻をかき分け、俺を見つけた。
ただしそのおねえちゃんは俺よりずっと大きく、上半身は裸で…下半身は魚の姿。
…人魚だ。
おねえちゃんの耳元にも目立たないがエラがあった。
おねえちゃんは俺をひょいと両手ですくい上げ、おでこにキスをした。
「可愛い♪名前は『テトラ』にしましょう」
俺は自分の上半身、下半身を触って確かめる。
このおねえちゃんのように豊満な身体ではなく、腹が出ているが、…間違いない、この銀色に輝く尾ひれ…俺は人魚に生まれ変わったのだ。
…しかも、女の子のようだ。
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