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ずっと一緒
どうせ捨てられてしまうなら、さっさと竜樹を食べて人魚に戻った方がいい?でも、食べたところで泣かない自信はあるのか?
全く無い。
きっとどちらにしても、泣くんだよ俺は。
食べたら竜樹に会えなくなる。俺の血肉になるからずっと一緒にいられる、なんて考え方、人間の記憶を持っている俺には到底無理だ。
どちらにしても泡になって消えるのであれば、竜樹がここにいる間は楽しもう。…もしかしたら、竜樹も俺と離れがたくなるかもしれないし。
俺は心を決め、近くを泳いでいた魚にエレナへの伝言を頼んだ。
『しばらく、ここに居るから』と。
「本当にいいのか?」
「うん、家族にはちゃんと言ってきた。竜樹がここにいる間…ここに居させてくれ」…本当は帰りたくても帰れないんだけど。
人間の身体により近づいた俺は、お湯もシャンプーも調味料も割と平気になった。
竜樹と一緒に料理をしたり、泳いだり(以前は浅瀬でしか遊べなかった)、狭い風呂に一緒に入ったりした。
その時、コンディショナーを使ったことがないと言うと、驚かれてしまった。
前世で使っていなかったからなぁ…。
夜になると、エレナの催促する声が遠くから聴こえてくる。
エレナ、ごめん。もう二度と会えないかもしれない…。
俺は竜樹の腕の中に潜り込み、布団を頭からかぶる。
そんな俺を竜樹は愛おしそうに抱きしめる。
ずっと、このままでいられたらいいのに。
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