ずっと一緒

1/1
前へ
/27ページ
次へ

ずっと一緒

 どうせ捨てられてしまうなら、さっさと竜樹を食べて人魚に戻った方がいい?でも、食べたところで泣かない自信はあるのか?  全く無い。  きっとどちらにしても、泣くんだよ俺は。  食べたら竜樹に会えなくなる。俺の血肉になるからずっと一緒にいられる、なんて考え方、人間の記憶を持っている俺には到底無理だ。  どちらにしても泡になって消えるのであれば、竜樹がここにいる間は楽しもう。…もしかしたら、竜樹も俺と離れがたくなるかもしれないし。  俺は心を決め、近くを泳いでいた魚にエレナへの伝言を頼んだ。  『しばらく、ここに居るから』と。 「本当にいいのか?」 「うん、家族にはちゃんと言ってきた。竜樹がここにいる間…ここに居させてくれ」…本当は帰りたくても帰れないんだけど。  人間の身体により近づいた俺は、お湯もシャンプーも調味料も割と平気になった。  竜樹と一緒に料理をしたり、泳いだり(以前は浅瀬でしか遊べなかった)、狭い風呂に一緒に入ったりした。 その時、コンディショナーを使ったことがないと言うと、驚かれてしまった。  前世で使っていなかったからなぁ…。  夜になると、エレナの催促する声が遠くから聴こえてくる。  エレナ、ごめん。もう二度と会えないかもしれない…。  俺は竜樹の腕の中に潜り込み、布団を頭からかぶる。  そんな俺を竜樹は愛おしそうに抱きしめる。  ずっと、このままでいられたらいいのに。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加