突然の知らせ

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突然の知らせ

「来月初めって…そんな急に!」竜樹が電話の相手に大声を出す。 『急では無いだろう。予定通りだ。お前の社長就任を邪魔する奴らは皆排除した。明日の昼に迎えを寄越すから、準備しておけよ。サユリさんも待っているぞ』  そう言って電話の相手は通話を切った。  サユリさん…?  竜樹は本当に御曹司で、お家騒動から身を隠していたのだ。 「参ったな…」ソファに座り項垂れる竜樹。  俺はその隣にそっと座った。 「ごめん、テトラ。明日、帰る」  …ズキン。胸の奥が、痛苦しくなった。 「そっか…」  沈黙が続く。  お互い、次の言葉を模索しながら相手の言葉を待っている。  行かないで、なんて無責任なことは言えない。  きっと竜樹は責任ある立場の人間なんだ。  だけど…明日の昼なんて、今から半日ほどしか無い。 「ごめん…」竜樹が先に口を開いた。 「待っていてくれ、なんて言えない。多分、向こうに戻ったらここに戻ってくる暇はきっと無い。だから…明日でお別れだ。勝手で…悪い」  こちらを向かず、項垂れたまま謝罪する竜樹。 「大丈夫…わかっていたから…」そう言って竜樹の背中をそっと撫でる。  やっと、こちらを向いてくれた。  無言で俺の身体を引き寄せ、キツく抱きしめる。  思わず、泣きそうになる。  ダメだ、泣くなら竜樹がこの島を去ってからだ。  その夜は朝方まで眠ることなく竜樹は俺を愛でてくれた。  一度だけ、竜樹の肩に噛みついてみた。  竜樹が「痛っ…」と言ったので、思わずやめた。  やはり、竜樹を食べることなんて出来ない。  竜樹は噛まれたところをひと撫でし、逆に俺の肩に歯形を付けてきた。  …確か、人魚の血肉は人間にとって不老不死になるとか若返るとか言い伝えなかったっけ?  竜樹が若返って、俺が今度は人間の女に生まれ変わって、また出会うんだ。  それもありかもしれない。  どうせ人魚の俺はもうすぐ消えて無くなるなら…。
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