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「愛華ちゃんのお母さんて、柚葉より年上だろ?」と、家に帰ってスーツを脱ぎながら和輝が言った。
私はウォークインクローゼットの中でスーツを脱ぎ、ハンガーにかけていく。
「うん。二つ……か三つ? 旦那さんは十歳くらい年上じゃなかったかなぁ」
「五十過ぎで三人目か……」
「びっくりだよね」
「俺らも作る? 三人目」
「えっ!?」
びっくりして振り返ると、和輝がスーツをかけたハンガーを持って立っている。
私はそれを受け取り、ポールにかけた。
正直に言って、三人目なんて考えもしなかった。
確かに年齢的には産めるだろうけれど、今の我が家に赤ん坊がいる生活が想像できない。
『二人で十分』と答えようとひゅっと息を吸い込んで、ハタと止めた。
過去を繰り返してはいけない。
振り返り、ベッドに腰かけてワイシャツのボタンを外している夫を見た。
「……欲しいの?」
「いや? けど、もしデキたら産んでくれるか?」
「え?」
「避妊は絶対じゃないだろ?」
ラブホテルに泊まった日からセックスはしていない。
久し振りの行為で、私も夫も二、三日は腰が怠かった。
もちろん、和輝がそうなのは気づいていても言っていない。そこは、男のプライドを守ってあげなければ。
でも、今までベッドの間に置いてあって、ベッドをくっつけた時に和輝側に移動されたローチェストの引き出しに、新しいコンドームが入っていることは知っている。
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