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「…かず君!かず君!」
聞きなれた優しい声が聞こえる。
穏やかで温かい陽だまりみたいに柔らかい声が…。
「…ママ…?」
まだ眠たい目を開くとそこには和平の母親が立っていた。心配そうに顔を覗きこみながら肩にそっと手を添えて。
「テラスで寝てしまっていたのね。今日は天気が良かったから肌が焼けてしまったんじゃないかしら?痛みは…無い?」
そう言われてみたらほんの少しだけヒリヒリと肌が痛む気がした。
だけど…
「大丈夫だよ。心配しないで」
「それなら良かったわ」
安心して微笑む母親の顔が眩しい。
(あれは…夢だったんだ…)
「あ…!」
庭を見渡してみたけれどそこにはもう「ピース」の姿が見当たらなかった。どこかへ行ってしまったのだろう。
「かず君、急にどうしたの?」
「ううん。何でも無い」
こうして和平の小さな冒険は終わった。
あれは本当にただの夢だったのだろうか…?
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