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四本足で歩くのは不思議な感覚だ。
小さな手足が大きな大地を踏みしめ、軽やかな足取りをなぞる様に足音となり耳に届く。
その音は普段聞いているそれとは全く違う力強さのある音だ。
それに耳を澄ませなくても沢山の音達が耳に響いてくる。
まるでオーケストラみたいだ。
重なって奏でられる音楽に煽られる高揚感が心地良かった。
「ここら一体はみんな俺様のナワバリだ。この世界は厳しいんだぜ。だけど俺様はケンカじゃ負け知らずだからな」
背中を向けたままピースが呟いた。
確かに風に乗ってほのかにピースと同じ匂いがした。
ネコはナワバリを持つと自分の匂いをつけるのだと聞いた事がある。
匂いがナワバリの証だと…。
「ねぇピース。ネコも…仲間外れとか…あるの?」
野生の動物達は助け合って生きている様に見えた。だからきっと…
「ったり前だろ!俺様は群れないタチだから好きにしてるけど、群れを作ってる奴らはシビアなんだ。
弱い奴はいらねぇから見捨てるし、見てくれが良い奴はチヤホヤされるが俺様みたいな奴は強くなけりゃバカにされるだけよ」
「え…」
(動物の世界も…人間と同じなんだ…)
「ほら、見てみな。夜は俺様達の時間だ。ノラ達は人間様が寝静まった時間に集まって集会をしたりナワバリ争いをするだろう?そこで作られていくのが自分の居場所や地位ってやつよ」
どこからともなく様々な姿のネコ達が集まって来た。
この街にはまだこんなに沢山のノラネコが居たのだ。
ネコも人間達と大差無かった。
ただのらりくらりと生きているだけに見えたノラネコにもきちんとした社会がある。
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