悪女

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多少の援護があったものの、みんなさほど彼女に興味ないといった感じで、それきりその話は流れていた 以降掲示板は、私と美依さんが不仲になった話題で盛り上がっている …つまんねーな… みんなもっと彼女に興味持てよ ナンバーワンだぞ? そんなやつのスキャンダルなのに、祭りにならねーの? 私と美依さんの話題こそ、マジどーでもいいだろ! つかガセネタじゃねーし! 私はイライラして足踏みした …結局彼氏なのか客なのかもわからないし、手繋いだくらいじゃ、どっちかもわからないよ… そこで、脳天から雷を受けたみたいに瞬いた 雷受けたことないけど そうか…直接彼に聞いてしまえばいいのか ゆきさんがだんまりを決め込むなら、私が直接彼に会ってしまえばいい… 幸い、さっきの現場で私は見られてない そう思ったら瞬く間に支度をして、昨日の今日でまたあのバーに向かおうと歩みを進めた 行って会えなかったら… 一瞬そんな考えが過ったが、彼の言葉がフラッシュバックしてくる 『ご縁があればまた会えます、必ず』 縁か… 占いとか運命とか信じないけど、彼とはなんとなく…ご縁を感じるよ 更衣室を出るとき、ゆきさんの姿はなかった 私はそのまま、また昨日のバーに向かう 人通りの少ない脇道に入って、狭い階段を登っていくと ひっそりとその店は佇んでいる 若干緊張しながら扉を開ける 「いらっしゃい」 しゃがれたママの声が聞こえる 私は瞬時に、前回彼がいた奥の席に視線を向けるが、そこにはいなかった ついでママのカウンターの席に目を移すと、見たことあるボトル バランタイン… 視線をあげると、私と目線がぶつかった ニヒルな微笑み 私はその翳りある瞳に吸い寄せられるように、一歩前に出た 「やあ、また、会えましたね」 湿度のあるバリトンボイスが響いた 私はそのまま隣に座って、会釈した 「この間はありがとうございます」 「いいえ 困っている女性を助けるのは男の務め…だからね」 またいたずらな微笑み そんなキザなセリフもさらりと言ってしまう そして何か似合ってる ママから手渡されたビールで彼と乾杯して、一気に半分くらい飲み干す 「いい飲みっぷりだね」 初対面に近い状況で、付き合ってる人いるんですか?は聞けないからな… ある程度飲まないと… 「ママ、おかわり」 飲めば飲むほど、体の浮遊感と反比例して頭はしっかりしてくる なんか職業病なのかな 酔えば酔うほど、しっかりしなきゃと頭が働く 潰れてしまうことができない ある程度飲んだところで、酔った振りをして核心を突こうと思っていた 「同じお酒下さい!」 「スコッチだよ?飲めるかい?」 正直、酒の味なんかわからない 嗜んで飲むことなんかないからね 売り上げのためだけに飲んできたから ビールもウイスキーも腹に入ればみんな同じ酒だ 小さなグラスに入れられた茶色い液体を胃に流し込む どろりと食道を焦がしていった 「すごいね、お酒強いって言われない…?」 「いいえ~…強い振りです そうしないと、勝ち上がって行けないからっ」 「何に?」 「ゆきさんに」
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