悪女

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難しい話だけど、言ってることはわかる 私の魅力ってなんなんだろう やっぱ顔かな? でもそれは、私じゃなくて、「麻衣」の魅力 じゃあ私は? 私自身の魅力って、何があるの? 「…あの、なんでゆきさんの愛人?してるんですか…?ゆきさんの…その…何に魅力を感じたんですかね…?」 最後の質問は、恥とプライドを捨てて聞いた 多分そこに ナンバーワンの秘密が隠されている気がするから すると男は笑い出した 「はっはっ、じゃあ逆に聞くよ 麻衣さんはゆきのどこに魅力を感じる?」 は? それを聞きたくて言ってるのに…なんかバカにされてる?私 それがわかったら苦労しないし、聞かないわ わからないから聞いてんのに 「…うーん…客観的に見て、やっぱ顔ですかね キャバやる限り重要だと思いますし」 「まあ、確かにね 初対面で顔がいいのはポイント高いだろう でも、顔がいいだけの女はつまらないよ、長くは付き合えないと思う 中身が空っぽだから」 淡々と語る男 へらへら笑いながら、美貌だけを武器にして楽して渡り歩いて行く人に憧れていたが、今気付かされた 可愛いだけのバカは飽きられる これから歳を取って、40、50になって、しわくちゃの顔になった時、顔だけで売ってきた人は惨めだ 無知は罪だ 情弱は怖い 可愛いだけ、美人だけが許されるのは、本当に若いうちだけなんだから けれども、それと同時に思う なんだかんだいって、人って、外見だと だって、外身に惹かれないと、中身を知ろうとも思わないでしょ? キャバクラなら特に 初対面で好かれなければその後発展する可能性は、さらに少ない 人は見た目じゃなくて、中身だよなんて言うやつ 私には偽善者にしか思えない だって中身なんか、付き合って後からついてくるものなんだから 私は、人は外見だと思ってるからこそ 麻衣になったからこそ それが身に染みて感じるんだ 「私がゆきと関わってる理由は、顔がいいだとか、そんな理由じゃないよ」 「じゃあ…」 中身…? まさか、ね ゆきさんが顔がよくて、中身もいいやつなんて、私が許さない… 「簡単に言うと、シンパシーみたいなものかな…」 シンパシー…? 「長く生きているとね、私にいい寄ってくる女性って言うのは目的が限られてくる、私のお金とか、権力とかそういうもの …けど、そういう女性はすぐにわかってしまうんだよ 私は、そういう女性をかまってあげられるほど、時間はないし、寂しいわけでもない そして、そこまでのお人好しで優しい人間でもないんでね ゆきはそういう、私が目に見えて持ってるものではなく、私自身を見てくれたことで魅力を感じたんだよ」 彼は、見た目だけで擦り寄ってくる女はその段階で振り落としているのか… で、ゆきさんに魅力を感じるねぇ… 要は外見じゃなく、中身を見てくれたからってことか やっぱり中身… でもそれは彼クラスのいい男だから、選べるんだろうな 大抵みんな妥協ってやつをして そこそこの相手でやっていってるわけだし… 「納得してない顔だね」 男は酒を傾けた 氷が鳴る 「えっ?」 「私がゆきに感じたシンパシーは、彼女の生きざまだよ かなり苦労して、育ったみたいだから」 生きざま… 「多分それが彼女を作っている魅力であり、オーラだと思うよ」
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