悪女

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「きゃーなになに!?すごい幸せそうじゃん!うらやまー!いいなあ!写真ないの!?」 抑揚のないセリフをマニュアル通り繰り返す 「あっはは! 写真はないけど、今度プリ撮ったら見せるよ!」 「マジ! ちょー楽しみにしてる!!幸せだね!うらやましい!」 大きな声で、思い切りリアクションを取る 私は今、上手に笑えているだろうか? 悟られやしないだろうか 他人の幸せを素直に喜べない私を 馴れ初めまで聞いてしまうと、無意識に恨み言を吐いてしまいそうになって、ハニトーを詰め込んだ 「麻衣はどうなの? 彼の話とか全然話してくんないから話しづらかったんだよね…」 それは彼氏がいないからだっつーの! 「いやー?相変わらず彼もいないし、浮いた話なんかないなー…紹介してよ!」 最後は笑いながら冗談を言った 一瞬、ゆきさんの愛人の顔が浮かんだが、すぐに消した 「そっかー、仕事は?順調?まだ居酒屋でバイトしてるの?」 「まあね」 ぴしゃりと話を止めた そのまま会話はなくなり、私たちは無言でハニトーをつついた 時計を見ると、20時をさしていた そろそろ出勤しなきゃ… 「麻衣には幸せになってほしいよ」 「…え?」 伝票を持とうとした私を愛のセリフが止めた 「偽善者だって思われてもいいんだけどね 友達って、いっぱい居てもいいと思うけど 親友って数人だと思ってるの 麻衣とは小学生の頃からの付き合いで、ずっと一緒にいたし、私は親友だと思ってるのね 親友って、喧嘩してもまた仲直り出来る仲だったり、何でも包み隠さず言える存在が親友って呼べると思うんだけど、私はそれが麻衣なんだ だから、麻衣も、私には甘えてもいいんだよ っていうか、甘えられたい 麻衣は自分の意見っていうか、自分の意志を私に言ってくれないから 親友の私としては、ちょっと寂しいよね 頼りないかもしんないけどさ、私に出来ることなら何でも言ってよ」 甘えは、自分を弱くするんだ それにつけこんで、主導権を握り、従わせようとするやつなんかいくらでもいるんだよ 知ってるかい? 頼った後 相手がいなくなった時、裏切られた時 どれだけ立ち直るのが辛いか だったら、最初からそんな人いらない それでも、あんたは受け止めてくれるというのか? 最終的には頼れるのは、自分自身しかいないんだよ けど 最近、それも疲れてきた 私は幸せになれるのかな? 幸せになりたいよ 「…出よっか」 私は伝票を持って、お金を払った 「割り勘でいくら?」 愛がグッチの財布を開きながら聞いてきた 「私から誘ったし、いいよ!」 「えー!悪いよ、いいよ!払うって!」 「ううん、いいの 昨日お駄賃もらったしね」 「お駄賃…?」 不思議そうに首を傾げる愛に、私は歩きながら 人が周りにいない頃合いを見計らって、言った 「私、キャバクラで働いてるからね…」 「えっ!?」 愛はびっくりしたような声で歩みを止めた 私は気にせず真っ直ぐ前を向いて、出口に向かった 「ほんとに? キャバクラで働いてんの…?」 愛は小走りで近寄ってくると、眉間にしわを寄せ、小声で話してくる 「そうだよ」 暖房が効いたショッピングモールから外に出る 火照った顔に、一気に夜の冷気が当たった 愛はどう思うだろう… 私がキャバクラで働いていることを軽蔑するだろうか…? 嫌われたくなくて キャバ嬢やってると思われるのが恥ずかしくて 仕事に自信が持てなかった なんでキャバクラなんかで働いてんの? 人に言えないような仕事やってて、両親は知ってるの? 最底辺の奴しか出来ない仕事だよね 酒飲んで金稼いで、楽な仕事でいいね キャバクラに来る、心ない人たちの言葉 バカにされるのが嫌だったから でも、あんたが私の親友っていうなら… 愛だけには、私の内側の部分を曝け出すよ
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