悪女

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女の子たちは私と目が合うも、空気のように無視した それでも私の口は止まらない 「言いたいことあるなら、正々堂々と言ってみろよ」 陰でこそこそやるなんて、弱虫がやることだよ 「マジ、うぜーんだけど あんたのそういう、調子乗ってるところが嫌なのわからないの? 目障り」 「調子乗ってるの意味がわからないけど? 目障りなら、辞めたら? お店も稼げない子がいなくなったら、負担もなくなるしね」 私は嘲笑ってやった 「はー?」 「マジ何様だよ、てめー!」 一人の子が私に詰め寄ってきたところで、キッチンの扉が開いた 「なにやってんだ」 店長が手に飲料水を持って怒鳴り込んできたのだ 「お前らタバコばっか吸ってないで、仕事しろよ、客呼べ!」 タバコを吸ってた女の子たちに怒鳴り散らし、キッチンから追い払っていた 「マジうざーい」 そんなセリフを吐き捨てながら、女の子たちはキッチンからぞろぞろ出ていった 出る時に私を鋭く睨み付ける 「大丈夫だった? スポーツドリンク買ってきたから飲んで」 優しく寄ってくる店長からスポーツドリンクを受け取って、何口か飲んだ うわ… 余計酔いそう! 甘ったるいそれを、店長に突き返して、ありがとうと呟いた 店長はまた懲りずに私の方へにじり寄ってきた 酒で酔ってるし、勘弁してくれ、と思った時キッチンの扉が開いた 「麻衣さんいますか?」 ホールに出ているボーイ タイミングよく入ってきたボーイに感謝して、張り切って声をあげる 「はい、どうしましたー?」 「あ、麻衣さん、お酒は大丈夫ですか? ○番テーブルで美依さんのお客様がちょっと着けてほしいと言ってます、場内狙うチャンスですよ」 美依さんのお客様… 私は指示された席におずおずと向かった すると、さっきの団体の女の子たちが、待ってましたと言わんばかりに、私をまじまじと見つめている 「麻衣さんです」 「いらっしゃーい」 真っ先に口を開いた、団体のリーダー格みたいな女が、仕切りだす 「あみ姉、この子だよ」 美依さんがあみ姉と言った女は、ニヤニヤ笑うと、噂はかねがね聞いております、と言った その言葉で外野の2人が口々に喋りだした 「噂通り、別に大した女じゃないね」 「よくこんなんが、人の客盗れるよね」 そこで、リーダー格あみ姉が2人に諭す 「どうせ、枕っしょ それなら風俗すればいいのにねぇー」 そう言いながら、私の方へ振り返り、またニヤニヤ笑った 「じゃああなたが風俗でも働けば?」 私は咄嗟に「枕」と言われたことに腹が立って、初対面の人に楯突いた 普段なら、こんなこと無視してるのに お酒がかなり入っているからか、気が大きくなっている つーか、そもそも枕でもして、色彼ごっことかしていたの、美依さんだろうに 一緒にすんなよ 私枕なんかしてないし お客を教育しきれない、あんたの指導不足でしょ 私は美依さんを睨んだ なんなんだ、さっきから 言いたいことがあるなら、仲間を使わないで直接言えよ と言いそうになったところで、あみ姉と呼ばれる女が口を開く 「あたしもう風俗で働いてるし あんたより稼いでるから」 誇らしげに、どや顔をしている女 当たり前だろ そもそも風俗とキャバクラは単価が違うから、稼げる額だって違うんだから それを自慢気に言われても むしろそれでキャバより稼げなかったら、辞めた方がいいし… 私は歯向かう気にもなれず、無言で無視した 「あんたみたいな性悪に風俗は無理だけどね」 うるさい女だ だいたい、あんたたちは私にそんなこと言うために来たの? ねちねち私をいびるために? 性悪はどっちよ 美依さんはそんな様子を見ながら、みんなで笑っている 群れないと、なんもできないんだね 「お酒持ってきてよ!パリ5本!!」 そこで急にあみ姉が叫んで、シャンパンが最初に2本運ばれてきた 景気のいい、コルクの抜ける音が、ポンッ、と響いた 私はボーイさんから受け取ったそれを、シャンパングラスに入れようとした 「なーんで持ってんの?」 変な音程でシャンパンを指さしながら、あみ姉が言ってきた 飲めと煽るそのシャンパンコールは、今の私には限界だ 焼酎でもうすでにきてるのに、今ここでシャンパンなんか飲めない 美依さんは私を潰す気なのか…
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