悪夢

4/12
前へ
/67ページ
次へ
真面目な子はキャバの仕事は向いてないと思う 適当にあしらえるくらいになれなければ、この仕事はストレスでしかない きっと普通の子なら耐えられないだろう 「次に触られたら、席抜けちゃいな! お客さんが怒ろうが、触られるから嫌だって店長に言えば大丈夫だよ!」 「そっか、ありがとう! そう言えばこないだ場内してくれたお客さんがねえ~…」 こうやって、愛のお客さんの話や、キャバの接客術を話ながら、2人でストレスを発散していた そいえばゆきさんはどうやってストレス解消してるんだろ… 毎日毎日色んな客を相手にしているけど、毎日必ず来る人や、常連さんもいる きっとその中には、お触り客や色恋客もいるだろう どうやってかわしてんのかな… もちろん私にだってそんな客うじゃうじゃいる きっと、ファン、いや信者と呼ばれる客はみんなそうだ 綺麗にスマートに飲んでお金を落としてくれるやつなんて、その中の、更に一握りだよ 「いらっしゃいませー!」 「彼氏来たよ!」 お店の子が茶化して私に言うので、入り口を見るとよっちゃんだった 「違うっつーの!」 げんなりしながら、笑顔で席に着く 「おはよー!」 よっちゃんは美依さんが辞めても、私のお店に来てくれる もちろん理由は簡単 「いつプラベで遊べる?」 店外目的だから 「最近は忙しいでしょ、12月で年末だし、この間も社長に年末だから客呼べとか詰められちゃって…ほんとしんどいから、来月なら時間出来るかも…」 って言いながら、数ヶ月引っ張っている 「それ先月も言ってたじゃないかよ…来月来月っていつ暇なの?これじゃ俺ただの客じゃん」 暇はあるけど、あなたに使う暇はないよ ただの客以外なにものでもないのに、何勘違いしてるんだか 「お客さんとは思ってないよ!よっちゃんは私の大切な人で、心の支え だからポイント足りない時はよっちゃんにお願いしてるんだよ?」 「…わかるけど…じゃあもうお店辞めなよ 最近さ、店に金使うの勿体ない気がして、だったらお前に直接使った方がいいし、辞めたら俺が全部養ってやるし」 出た、お得意の彼氏気取り 養ってやる、ねえ… そんな上から言われても お前に囲われるくらいなら、独りで生きていくわ イライラしながら、よっちゃんに返す言葉を組み立てていると声が聞こえた 「麻衣さん少々お借りしますー!」 よかった、逃げられる! 「ごめん、ちょっと行ってくるね」 よっちゃんは無言で拗ねている めんどくせっ 返事を待たずに、席を抜けた 代わりに愛が席に着くようだった 私はまた笑顔を作ってお客さんの席に座った 「やーん、河原さん!おはよう!」 「なんだ、いたの!」 この人は、すごい皮肉屋 話してても、私の話は否定しかしないし、かといって自分から話すわけでもないし、最近地味にめんどくさい 「麻衣さん少々お借りします!」 「ずーと帰って来なくてもいいよ!」 「寂しいこと言わないでー!」 このやりとりが疲れる 「麻衣さん、さっき着いた席で場内入ったので、行きましょう」 そのお客さんは頭がハゲてきた、まだ30歳の若者だった 「さっき話した中で一番可愛かったから、指名しちゃった!」 「ありがとうございます…」 「ねー今度遊ぼうよ!」 「そうですね…忙しいから出勤前にご飯なら大丈夫ですよ」 「同伴でしょ、いいよ!」 お?話わかるやつだな こういう人が沢山増えないかな… 新規や団体の席に着いても、プラベで会いたいとか遊びたいってやつの方が多い 例え、そういう客がリピートしたとしても、一回きりだったり、色恋や、店外要求がしつこい客ばかりだ いや それは常連も信者も変わらないな… どんなに私に尽くしてくれても、優しくていい人でも、掛け値なしでお客さんのことを好きになれるかと問われれば、私は、答えはノー、だろう もちろんそれは、お金のために、キャバで働いているからでもあるし、人間的に魅力があるお客さんじゃないからだ だけど、私たちはお給料を頂いている立場だから、笑顔で話を聞くし、必要とあらば、好きな振りもしてあげなきゃならない でもそれは遊びの世界であって、勘違いはしてほしくないんだよね… こんなことわかってて飲み歩いてる人は少ないけど…
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加