悪夢

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売る 売る 売れる 売って、売って 売りまくる そして、売りぬくんだ この美貌で 神様が与えてくれた、チャンスを 幸運を 手に入れる 主役の座を 年末は、飲食店…まあキャバクラにとって一年に一度のかき入れ時 と、私は思っている 冬のボーナス クリスマス そして、仕事納め みんなが飲みに出る月 12月は一ヶ月通して 一ヶ月に三度もイベントがあるようなもんだ 12月半ば そんなことを繰り返していたら、ゆきさんの成績を抜かしていた 遂に私はゆきさんを抜かしたのだ 四年のキャリアなんか関係ない お客さんの数も関係ない 才能と、運と、美貌 お客さんを手に入れる才能を身につけた私は、もうゆきさんだって抜かせてる 怖くない 年の瀬のミスティックは、次から次にお客さんが入ってくる バブルのようだ まあ経験したことないけど それくらい、ひっきりなしにお客さんが入ってくる 普段お金を使わない守銭奴なサラリーマンや、職人が、ここぞとばかりに騒いで、お金を使う 後1、2週間で年末 長いようで短い それまでにゆきさんに抜き返されないよう、私の信者で固めなきゃ 私はラストに、ナンバーワンになってやるんだ が、年末はあっという間にやってきた 今日は、こないだ場内をもらった30歳のハゲてる人と同伴だ 新規フリーからの本指で返ってきて、話もわかるやつだしラッキーだった 約束は19時 お店は20時からなので、一時間軽くご飯食べるくらいで丁度いいだろう 「お待たせー!いやぁ仕事が長引いちゃって!ごめんごめん!」 約束を20分過ぎたところで、お客さんが軽々しく現れた その謝る気のない態度にイラっとしたが、仕事だと割り切り、笑顔で対応する これも同伴のため 食事する場所に入って、メニューを頼んだところで、男はまたとぼけた様子で口走った 「いやあ今日ちょっと、仕事場に戻らなくちゃいけなくなってさ、同伴出来なくなっちゃったんだよね」 は…? 「だから今度は同伴で行ってあげるから、今日はプラベって感じで大丈夫かな?」 男は半笑いで届いたお酒を飲んだ なにいってんだこいつ… プライベートでって 遅刻した挙げ句、また仕事とか…同伴の約束した癖に、謝る気もない… 私は怒りでわなわなと唇が震えてきて、きゅっと噛んだ イライラして胃がムカムカしてきた もう嫌だ…我慢出来ない 私はメニューを見ていた男の手からそれをふんだくって、閉じると、思い切り睨み付けた そしてきっと言ってはならないであろう、言葉を吐いた
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