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「…あなたは人の時間を割いている自覚はありますか…?」
「え…?」
「仕事が忙しいって言ってるけど、そんなの理由にならないし、言い訳だろ
私だって、仕事してるし
なにがプライベートだよ
あんたとなんか、仕事でもなきゃ連絡もしたくないし、会いたくもないんだよ」
身の程を知れ
金がないなら、自分の大切な時間をお前に割く女なんかいないと思い知れ
男は私の言葉にズタズタに切り裂かれたのかわからないが、無言になった
その後男は、ぼそぼそっと弁解していたが、空気のように無視した
仕事でもないなら、客と話す理由すらないだろ
以前に、客ですらない
ゴミクズだ
そのまま時間になった私は、お疲れさまと言って飲食店を出て、出勤した
イライラが収まらない
こんな状況で仕事に着いたら、仕事にも悪影響だ
私は言うことを聞いてくれるお客さんに片っ端からメールした
助けてもらってイライラを収めないと
それから更衣室で、ぶちぶちしながら着替えた
まだランキングは私が一番
ゆきさんとはあと25ポイント差だ
多分、いくら年末最後といえど、席数は決まってるし、抜かされないとは思うが…
油断は禁物だ
なにせ、今日は同伴ダメになったから、他の客に応援してもらわないと
待機に向かおうとすると、途中、でっかいお皿に、お寿司が沢山敷き詰められたお膳が2つに、周りには高そうな洋酒が何個も置いてあり、卓を囲んでいた
うわ、なんかめっちゃバブリー
やーさんのお客さん?
私はびっくりしながら待機席に着くと、それと同時に、いらっしゃいませー、と入り口からでかい声がした
あ…
そこには愛と
よっちゃんが、親しげに入店してきたところだった
その姿を目で追いながら、麻衣さん、と言われるまで、私は突っ立ったままだった
なんで…?
どうして、愛と…
よっちゃんが…?
疑問はなかなか消えない
直接問い詰めて聞きたかったが、そんなの、なんだかバカらしいし、席にだって着きたくない…
どういうつもりなの?2人とも…
私は更衣室に戻って、気分を落ち着かせようとしたら、丁度、愛が着替えに入ってきた
「おはよー!」
愛は特に悪びれた様子もなく、親しげに私に話かけてきた
手には、ブランドショップで買ったと思われる、ショップ袋をぶら下げながら…
「ねぇ麻衣聞いてー!よっちゃんが…」
「ごめん、忙しいからまた後でね!」
愛の言葉に、自分の言葉を重ねるように、ピシャリと会話を遮断した私は、更衣室を出て、トイレに駆け込んだ
携帯を見ても、さっきお客さんに送ったメッセージたちの返信は、一通もなかった
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