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くそっ
なんだよ、みんな
返事、寄越せよ…
ツライトキニ
ダレモタスケテクレナイ
うるさい…!
ネガティブな感情が湧き出てきたので、それを一喝した
違う…
私は変わったんだ
もう、うじうじ悩んで、くよくよしていた頃の私じゃない
もう愛じゃないんだ…!
年末のお店は徐々に混みだし、気付いたら席は満卓だった
もう!今から来ても座れないし、待ちだよ…
携帯の液晶を見るが、未だに誰からも連絡がない
「いらっしゃいませー!」
はっとして入り口を見る
が、私のお客さんではなく、落胆した
「麻衣さん!」
店長に呼ばれ向かうと、先ほどのバブリーな席を指さして言った
「あそこ、愛さんのヘルプお願いします」
愛…
ぼんやりしながら指定された席に向かうと、いやらしく、クラッシュアイスにブランデーを注いだグラスが置いてあった
お寿司は半分残っていたが、どれも余り物って感じのネタだった
「麻衣ー!」
屈託なく笑う笑顔
「西園寺さん、彼女、私の友達なの!よろしくね!」
と言って、愛は西園寺と呼ぶ客に私を紹介した
愛はアルコールが入っているのか、顔が蒸気して、頬が赤い
「お邪魔します」
でっぷり太って、金色のアクセサリーを着けた、いかにも成金みたいな男は、色の着いたメガネを、クイっと手であげると、ぶっきらぼうに言った
「好きな酒飲め、好きな寿司食え」
「愛さんお願いしますー!」
店長の、活気のいい声が響く
愛はするりと席を抜けると、違う席に飛んでいった
私はそれを目で追いながら、指名、被ってるのか…とぼんやり思った
ああ…なんだろう…
今日はやる気が出ない
そもそも同伴すっぽかされた時点で
「おい、聞いてんのか?」
私は、はっとしてお客さんを見ると、眉間にシワを寄せながら、メガネの下から小粒の目で私を見ていた
「…はい…」
「聞いてねーだろ、ぼーっとして
やる気ないんか?
そういうやつは営業の邪魔だから、帰った方がいいな」
は?
何を知ったように、営業とか…オッサンになにがわかるんだよ
私はちょっとむすっとしてしまった
「へっ
お前わかりやすいやつだな
この仕事向いてないよ」
…むかつく…
あんたに何がわかるの…?
「あの、トイレ…行ってきます」
「どーぞ」
歩きながら携帯を見ると、アプリのアイコンに新着マークが着いていた
やっときた!
私は嬉々としてメッセージを開いた
連絡の主は河原さんだ
河原:もう、麻衣さんと関わるのが疲れました
他に好きな女性もできたので
さよなら
営業連絡に対してきた連絡は、なぜかお別れの連絡だった
携帯を持つ手先が冷たくなっていく
私が望んでいたメッセージは、こんなメッセージじゃない…
どこでそうなったの…?
「ちょっとまだー?!」
トイレのドアをどんどんノックされて、放心状態で、トイレから出た
「あっ麻衣さんいたいた!今度また愛のヘルプね!」
そうして案内された席は、さっき入り口で見た男
でも、この人…
何となく見覚えがあるような…
対面に座り、じーっと無言で男の姿を見る私
確か、どこかで…
どこだっけな…?
「君も麻衣って名前なんだね」
「へ…?」
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