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「えー、静かにしろー! 皆に転校生を紹介するー!」
空くんがいる2年3組の担任の先生は、背が高くて少し猫背だ。先生が教壇に立つと、がやがやと騒がしかった教室がしん、と静まり返った。教室内にいる皆の目がミケランに集中した。こんなに多くの人間の視線を浴びたことがないミケランは、怖くてぶるぶると震えた。
(どうしよう……ちゃんと、ごあいさつしにゃきゃ)
黒板に “三毛石ラン” という、ミケランの人間の姿のときの名前を書き終えた猫背先生は、「簡単な挨拶だけでいいから」と、ミケランに小声で言って、ポンと肩を叩き緊張を和らげようとしてくれたが、ミケランの震えは止まらなかった。中々自己紹介を始めようとしないミケランを見て、何人かの生徒は心配そうな表情をしていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよっ! このクラスのヤツらはみんな、いいやつだからっ!」
教室の窓際、いちばん後ろの席から聴こえてきた声をミケランは忘れるはずがなかった。
(空くん……)
空くんの優しい声に後押しされたミケランに、もう、怖いものはなかった。猫背になりかけていた背筋をピンと伸ばして、ミケランは、
「父の仕事の関係で、イギリスから引っ越してきた “三毛石 ラン” です。わからないことだらけですが、よろしくお願いします」
と、ネコ神さまから言われたとおりの挨拶をし、にっこり微笑んだ。そこかしこから「よろしくね!」という、あたたかい声が飛び交った。
「じゃあ、三毛石の席は、“猫目石” のとなりな! 猫目石、手を挙げて!」
空くんが、にこにこしながら手を挙げた。ミケランは、嬉しさのあまりしっぽが出ていないか、ちらりと確認した。
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