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確かに今の日本は、旧世代のインフラの更新が間に合ってないし、こういった金策は致し方ないと、隈川は考えないことも無かったが、常日頃本物のコーヒーを飲む優雅な生活を思い描かかずにはいられなかった。
休日の昼下りに、バルコニーで木漏れ日を受けながら、香る湯気を放つ、白磁のマグカップに入った黒々とした液体を飲むことは、隈川にとって思い描かない日など無い夢だった。
隈川は飲み切ったカフェイン溶液のボトルを投げ捨て、先程買ったノートパソコンの梱包をむしり開けた。それを丁重に持ち上げ、丹精に細部を見渡してみると、裏には掠れた文字で、製造番号などの情報が記載されていた。しかし、どこで造られたかなどの詳しいことは分からなかった。
プラグをコンセントに差し込み、電源を付けた。パソコンは長い間起動されていなかった為か、立ち上がるまでにかなりの時間を要した。彼にはその時間が甚くじれったかった。それは彼にパソコンの知識が足りなかった為でもあるし、書きたいという気持ちが早まった為でもあった。
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