2.Indwelling

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 隈川はノートパソコンを畳み、それをタオルで包んだ。その行為は、相変わらず煩く回転し続けているファンの音を遮断するためでもあり、不意に警察に家宅捜索をされてしまったときに、発見を遅らせようと考えた為でもあった。その方法が良いか悪いかはさておき、隈川は現時点ではタオルで包む以外に解決策を思いつくことが出来なかった。  タオルでパソコンをくるんでしまうと不思議と安堵してしまい、全てがどうでも良くなってきた隈川は【共感映画】でも見て寝ようと思い、ヘッドセットを用意し、()()()()()で起動される方のタブレットを手に取った。  五秒も立たないうちに、政府公式の機械(デバイス)は起動し、画面の横からは親切にも今話題の【共感映画】のトラッキング広告が画面の端に表示される。タイトルは『西町で起きた生徒間の恋愛と発展』だった。これは実際に起きた出来事を元に役者が再現したものだ。話の筋は専門家立ち合いの元、最大限事実に基づいて、限りなく潔白に製造されていた。誠実な作りのノンフィクションであることを保証されている、国家直属撮影機関がクレジットに表記されていた。
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