3.Consequence

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 隈川はどうせ【創作罪】で拘留される危険を冒すのなら、思い切った虚構を描きたいと考えた。現実にないものを登場させ、胸躍るものを作りたいと考えた。  そこで思いついたのが、恋愛と闘争を組み合わせた活劇だった。主人公は凡庸な外見をしていながらも、優れた格闘術を習得している。その主人公は、悪の組織と化した政府と闘う最中、街中で美しい女性を助ける。そして、その女性と恋愛をしながら、革命を起こすのである。  隈川は嬉々しながら、思いついたアイディアを忘れないよう紙にメモした。昨日は勿体なく思い米粒よりも小さい文字で書こうとしたが、今は溢れ出てくる物語の原型の方がよっぽど高価値であるように思えた。故に、潤沢に紙面を使い、そのプロットを走り書きした。  隈川の心は高揚し、全てが上手くいく気持ちがした。そうだ、今日は景気づけに本物のコーヒーを買いに行こう。少々金銭面的には痛いが、その香気を鼻腔に(くゆ)らせながら、至高の物語を生み出すのだ。それこそが、彼の思い描く至福だった。  隈川は顔を洗い、髭を剃り、服を着替えて身支度をした。
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