4.Health

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 【校正施設】に到着すると、既に職員らしき人たちが、待機していた。一人は看護師らしい三十代前後と思しき女性が張り付いた笑みを浮かべており、その横にはスーツ姿の同じく三十代前後と思しき男が立っていた。男の職業が何であるかは隈川には想像がつかなかった。  そもそも隈川にしてみれば、【校正施設】がどのような施設かさえ分からなかった。大理石の表札には肉太なフォントで削られた『〇〇区立校正施設』という文字の下に、警官の帽子にもあった文科省スローガン『truth and order bring you peace.』が刻まれている。  なぜ更生ではなく、校正なのか。校正とはどのような治療なのか。隈川は三ヶ月の懲役の間ずっとこのことを考えていたが、何一つとしてそれらしい解答に辿り着くことは出来なかった。だが、これから実際に体験することだ。何を考えても仕方ない。隈川はそう腹を括り、待ち受けていた職員の元へ向かった。
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