4.Health

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五秒程の間があった。隈川は、この間にも不揃いな足音が気になって仕方なかった。 「それはまず問診をしないことにはお話しすることは出来ません。先立って問診をした後に、隈川さんの治療計画が入念に立てられます。どうか貴方は良く良く自省することのみに努めて頂ければと」 看護師らしき女はこのように説明した。隈川は後になって彼女の名札を見て分かったことだが、役職は校正助手であった。男の方は校正師とのことだった。  隈川にとって診療室までの道のりは、妙に長く感ぜられた。廊下を五十メートル以上歩いたかと思えば、階段を三階分登り、再び四十メートル程歩いた。 「ここへお入り下さい」 ようやく案内があり、隈川はワンルームアパート二部屋分程の大きさの部屋に通された。診療室の中はとにかく白ばかりだった。 外の景色は色彩を帯びていると思われるが、窓は白いブラインドによって被覆されていて、完全に白い世界を生み出していた。使用方法が判然としない様々な機械が隅に押しやられているが、それすらも純白の塗装を施されている。
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