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「この後、僕はどうしたらいいのですか?」
と、隈川は聞いた。
「この施設に宿泊していただくことになります。隈川さんは刑期こそ満了されましたが、精神の健康状態は依然危篤といっても差し支えが御座いません。だって、考えても下さいよ。精神の尋常たる者が、長々とした虚構を連ねようとは思いますまい。言わば貴方は、虚言癖が複雑化したような、誠に厄介な状態にあるのです。
ですから、治療が終わるまでは当施設で寝泊まりしていただくことになります。衣類や日用品、食事などはこちらで用意いたしますので、お気軽に近くのスタッフに声をかけてください。治療費のことは心配しないで下さい。貴方は政府が認めた歴とした療養を必要とする人です。税金がちゃんとおりているのです」
医者はこのように丁寧な説明をした。
隈川は幾つかの疑問こそ有ったが、ここでどの様に反駁しようとしても、今後の結果は変わりようもないなと思い、静かに首肯するのであった。
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