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5.Repeat
カンファレンス室には、隈川を担当している医者と、校正師、校正助手、薬剤師、言語療法士が居た。彼らは今後の隈川の校正計画について会議していた。
初老の医師は、先刻彼に行った問診の結果を共有すべくこう話した。
「今回の被推敲者ですが、非常に厄介な状況ですね。軽症の方なら、【レーテー】(注・簡易忘却装置のこと)を使った後、【ムニン】で、標準健康精神をインプットすれば良いだけの話なのですが、彼には学生時代に上手く青春を体験できなかったことが原因となっており、一筋縄にはいかないと思われます。
実際彼は、過去に一度【創作罪】を犯し、施設で療養と記憶処置を施された後に、社会に還元されたとカルテには書かれています」
これを受け、薬剤師は、
「そうですね。この場合、私が薬物療法で精神の従順化をサポートしつつ、言語療法士の方に条件付けを行なっていただくのが最良かと思いますが……」
と進言した。これに、言語療法士は、
「そうですね。薬剤師の方も仰るように、我々がまず健全な精神をカンジャに宿した上で、記憶の再形成を行うべきかと思います」
と続いて同意した。
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