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午前八時に隈川は起床した。割り当てられた個室は八畳ほどで、一人で居る分には十分すぎる広さを有していた。が、診察室同様白いブラインド――固定されていて上げることができない――が、外の景色隠していた。
普段は頭痛の原因となる陽光が差すことが、隈川にとっては不快であった為、外の景色なんて然程気にならないだろうと彼は考えたが、【校正施設】に入ってからというもの、一回も外の景色を見ることができていなかったのは、隈川にとっては予期せぬ苦痛だった。
彼は、外の景色を一度でも良いから見たいと強く願った。
個室も相変わらず白色で統一されており、それは強迫めいていた。文章校正をするには、一度誤った文章を消去して白紙化する必要がある。
そのメタファが、このどこまでも広がる白色ではないのかと隈川は思った。俺はこれからどんなことをされるのだろうか、と隈川は考えたが、徒に己の恐怖心を煽ってしまうばかりだった。
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