5.Repeat

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* * *  政府は三十年程前、【ムニン】を全国に普及させた。実装当初は画期的だと持て囃され、多くの国民は学力が均一化され、勉強は苦心して行うものではなくなると歓喜した。が、実際には脳の優劣を顕著に示すだけだった。【ムニン】を使って、大量の情報を流し込むと、頭痛や別の記憶の忘却などの副作用が発現すると判明したのだ。  それには個人差があり、大量のデータをダウンロードしても副作用を出さない優秀な記憶媒体(ブレイン)を持つ者と、一ギガバイトのデータにさえ、大量の時間をかけてダウンロードしなければならない者が居た。  また、計算能力の差や、情報の論理的整理能力の優劣などは、記憶が外注化されるようになっても個々人によって大きく異なり、これらは遺伝によるものであることが、より明らかなものとなってしまった。情報を幾ら保有しても、それを扱いきれるかどうかはそれぞれ当人の遺伝的素養によって規定されるものだったのだ。
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