5.Repeat

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 推奨を拒否したところで、罰則は存在しなかったが、推奨通りの職業に就けば、安定した月額二十万円前後の報酬が政府によって一律保証された。  隈川は、政府の推奨した高速道路再敷設計画に従事した。彼の務める会社では政府が考案する、必須栄養素を補うことが可能である【国民弁当】が一食八九〇円で配給された。 「これは隣町の工場の雇用を守るためだけのクソまずい飯」 と隈川の同僚が口をこぼしていたが、彼は一身上の都合により、推奨職業から離職し、療養することになったらしい。  隈川は、その同僚のことを考えならがら、【校正施設】で配膳された朝飯の【国民弁当】を漫然と口に運んでいた。あまり意識すると、不味さゆえ吐き出してしまいたくなるので、できるだけ漫然と食らうことが彼なりの流儀だった。カフェイン溶液が付いてこなかったことが、隈川にとっては物寂しかった。
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