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施設に入って、十日ほど経った日の昼下がりのことだった。隈川の心持は冷静で、深い内省を行いながらも、みじめな気持ちに襲われることは無かった。彼は白い壁にも愛着を持ち始めた。何より清潔であり、無駄な思考に囚われずに済む。そういった晴々とした気持ちをしていると、扉を叩く音がした。
入ってきたのは、校正師と医師だった。医師の方が口を開き、
「隈川さん、順調に治療が進んでいます。貴方の精神は施設に来た当初よりも遥かに潔白であり、健康的です。これからは、経過観察を含め貴方にレポートを書いて頂きたく思います。貴方の健康状態をカンファレンスで共有し、今後の治療計画を立てていく上で、是非とも必要なのです」
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