7.Undo

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第四回レポート 三月二〇日  昨日までの数日間酷い頭痛に見舞われ、まともな思考さえ、はたらかなかったので、しばらくレポートをお休みさせていただいてました。一度快方に向かっていたのですが、私は再び記憶を失った様です。  こうも他人事のように、自分のことを記述するのも訳があります。なにしろ、私は多くの記憶を失ってしまいました。そのため、私は自分自身に関する記憶を何一つ持ち合わせていないのです。それに加え、なぜこのようなところにいるかも定かでないと云うのが実際のところです。  ただ、私の寝起きしている部屋が、病室らしいことや、数時間に一度、清潔そうな白い服を着た人が、私の安否を尋ねることから、どうやらここは病院らしいと判断しました。  私の過去について、看護師や医師らしき方々に尋ねたところ、 「まだその時期でない」 と一蹴されるだけで、明瞭なことは何一つ分かりませんでした。ただ、こうやって文章を書くことが、療養の手段らしいのです。  こういった顛末で、私は訳も分からず、思いついたことを書き連ねています。しかしながら、記憶が失われていると、どうにも書きようがないので、これで終いにさせてもらいたいです。
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