みゃあと鳴けばパン屋が儲かる

10/18

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 長老に促され向かい合って座るわたしたち。お互いに手を出しても届かない距離を保って黙って座る。長老がホイ、と手を向けた方から話すルール。らしい。先に長老の手が向いたのはプン太。まあ、わたしには話すことなんてないしそれもそうか。 「お前が作る食パンの耳がこの町に出回ってから俺の作る料理がちっとも売れやしなくなったんだ」 「……料理?」 「ジャゲボだよ!」  それが売れないのはわたしのせいか、な?聞いたことも無い名前に驚きながらも必死に納得しようと飲み込んでいく。ジャゲボ……にしてもすごい名前だな。もしかしたらこの世界では当たり前なのかもしれないし。 「そのジャゲボってのは、どういう料理なの?」 「ん、ほらこれだ。ネズミのシッポを三日三晩煮込んでそれから内臓を潰──」 「わかったわかった、もう、もう言わなくて大丈夫。オッケー」  プン太の差し出したものは、見た目と匂いだけは何故かパンそのものなのに、作り方は途中で遮ってしまいたくなるほどには人間の世界では考えられないものだった。これならほぼ見た目も同じうちのパンや食パンの耳の方が人気になってしまうのも頷ける。けどさ、猫って人間の世界ではもっとマシなもの食べてない?飼い猫はもちろんそうだけど野良猫たちだってそう。ここはせっかく猫たちだけの町なのに食べ物は人間の世界の野良猫たちの方がまだいいもの食べてるな……。なんとかならないの?そこらへん。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加