みゃあと鳴けばパン屋が儲かる

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「いったぁ……」  ドン、という音ともに強い衝撃を受ける。なんか、よくあるアニメや漫画みたいにもっと自然と空間転移でもするのかと思ったけどめっちゃ物理的。これ、ただ上から落ちただけじゃん。本当に不思議の国のアリスみたい。あー、でもまあ普通だったら死んでる高さだし、そこはあれかぁ、ファンタジーっぽいのかぁ。  変に現実的なことを考えてその場しのぎの現実逃避をする。こんなところまできてしまってわたしは帰れるのだろうか。そもそもあの子はどこ? 「(わたり)〜!今日も大量じゃないか!」 「渡が来るのをみーんな待ってたんだ、ほら座れ座れ」 「早く早く!ねえ早く配ってよう」  どこからともなく数人の声が聞こえて咄嗟に左手側にあった茂みに隠れる。よく見ればなんだか森っぽい?普通の世界とあまり変わらないみたいだけど……。聞こえてくる声だけで周りや、そこにいる人たちを想像する。もしかして何かの間違いで妖怪の国に来ちゃったりとか……?あー、そういうのってだいたいが困難に巻き込まれて大変なやつ。どうしよ、ちょっとそれはめんどくさいなぁ。 「ほら、みんなの分ちゃんとあるから並んで並んで」 「あ、渡、来てたんだ!俺も並ぼ〜」  あっ、この声……多分あの子?渡って言うんだ。おっ、じゃあ目的は達成。早く帰って店番に戻らないとお父さんにしこたま怒られることになっちゃう。それはそれで別に一瞬のことだしいいんだけど、何か面倒なことに巻き込まれたら嫌だしさっさと帰ろう。  立ち上がろうとした瞬間、足元で何かが動いた。ガサガサっ! 「きゃっ!!……え、子猫?」  すっかりそこにいるのが妖怪か何かだと思い込んでいたわたしは拍子抜けしてしまった。そしてそれと同時に、自分が声を出してしまったことに気づく。自分を全く隠せていない低い茂みの中で立ったままなことにも気づいた。あ、やば。
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