みゃあと鳴けばパン屋が儲かる

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「おい!そこにいるのは誰だ!」 「部外者だ部外者だ!おい、こいつ人間だぞ!」 「追い出せ!みんな、引っかいてやれ!」  見渡す限り点々と散らばっている猫たち。か、かわい〜……じゃなくて、え、狙われてる!?やだやだどうしよう猫は好きだけどこんな大勢でこられたら太刀打ちできない、しかもなんか喋ってるし、立ってるし── 「待ってみんな」  渡の一声でピタリと止まる猫たち。お、おお。やるじゃん渡。渡りの一言で少し冷静になった猫たちにつられてわたしも冷静になる。辺りをよく見渡せばただの森ではなく猫の国……いや小ささ的に町……のようだった。ネズミの形をしたランプが木々には吊り下げられ、上を見上げればおそらく猫語で「ようこそねこのまちへ」とかなんとか書いてあるであろうアーチ状の看板。中には服を着て立っている猫もいる。すごい。あ、でも、よく見たらあれってネズミの形のランプってよりも……ホンモノのネズミ?おお。まあでも人間も毛皮とかでランプ作るしね。そうだよね。 「ほらこの人だよ、みうらベーカリーの、パン屋さんの人。この食パンの耳くれる人」  なにやら周りでざわめきが起きる。そうです、わたしはパン屋さんの人ですが……。 「えっ、あの美味い食パンの耳を作ってる人か?」 「確かタダでくれてるって……」 「おーい、お茶持ってこいお茶ー!歓迎したまえ!」  一人の号令に合わせてにゃーんと鳴く猫たち。ここで改めて理解する。猫が喋ってる……。ひとつひとつ状況を整理していかなければ情報がとっちらかっていて何も分からない。まず、ここはどこ?なんで猫が喋ってるの?んで、渡は何者? 「ねえちょっと」  そろりそろりとこの場から離れようとしていた渡のランドセルを掴み引き留める。ビクッとした渡は恐る恐る振り返って下を向いた。 「別に怒んないってば。勝手に着いてきたのこっちだし」 「うん」 「けどなんでこうなってるのか教えてよ。なんでみんなうちの店の食パンの耳食べてるの?」 「話せば長くなりますけど……」  そう言うと渡は事の発端を面倒くさそうに話し始めた。
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