みゃあと鳴けばパン屋が儲かる

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 えっ、わたし?わたしのことを呼んでない?そう目で渡に問いかけると「そうだけど」と無言で頷かれまたもや素っ気なく返された。え、そんなぁ。わたし何もしてないし、それどころか何も出来なくて帰れもしないんだけど!? 「クソー!どこだ!絶対に見つけてやる!どこだ!」  こっそりと茂みの間から様子を伺うけれど、プン太と呼ばれる大柄なサビ柄の猫が他の猫たちを蹴散らしながら進む様子は見ていられるものではなかった。ポーン、ポーン、と投げ飛ばされ蹴り飛ばされる猫たちが可哀想で申し訳なくて、わたしはサッと立ち上がった。一瞬、渡の手がわたしを止めようと伸びたような気もしたけれどそんなのお構い無しだ。うちの店のパンを美味しいと言ってくれる人たち……猫たちが酷い目に合わされているのを黙って見ていられるほど偏差値38の女子高生だってバカじゃない。 「ちょっと!わたしに何か用?」 「あ!お前!どこに隠れていやがったんだ!」 「いいから、何?なんの用?」  パニックになっているプン太は暴れながらわたしへ爪を出したままの手を伸ばす。うわ、引っ掻かれる!そう目を閉じた瞬間、音が止んだ。 「……へ?」 「こらこら、やめなさい。プン太、いきなり人を襲うんじゃあない。そんなんだから頻繁には人の町へと行かせられないのだよ」 「う、長老……けどこいつの!こいつのせいで!」 「だからわたしのせいでなんなのよ、説明してってば」
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