受験ノ友（改訂版）

雪

そして彼女はルームメイトを
合格に導くと、次の夏まで現れない。

彼女は永遠に高校生。受験生のまま。
でもきっと決して不幸じゃない。

苦しみや葛藤を受験生と共有しながら
短かった生を何度も何度も生き続ける 。

ウワサを知る者の間で彼女は
受験生を合格に導く『受験の友』と
呼ばれているらしい。

合格発表があった。

アタシはなんとか第一志望の大学に
合格する事ができた。

寮は夏まで閉じられる。

カーテンで覆われた二段ベッドの上が
ぼんやりと明るい。

──雪美？

カーテンを思い切って引く。

墨で目玉が書き込まれたダルマが
ベッドの上から私を見ていた。

新学期……入学式の頃、
アタシは寮母さんに無理を言って
あの寮を訪れた。

アタシは雪美の机に
桜の花を一房置いて寮を後にした。

ありがとう雪美……。
貴女も、合格おめでとう。

さよなら雪美。
私は、卒業します。