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来未が変な事言うから アタシ自分のアタマ疑っちゃったよ。 机には古びた卒業アルバム。 寮母はページをめくった。 そこには知らない顔が並んでいた。 たった一人を除いて。 『三浦雪美』…… そのクラスのページで 1番可愛らしく輝いている。 違う。 似てるけど、全然違う。 寮母は重い口を開いた。 「三浦さんはね……美人で明るくて クラスだけでなく学年でも 飛び抜けて優秀な生徒だった。 お父さんが病気で亡くなると お父さんと同じ大学に入る為に なりふり構わず勉強に励んでいた。 生前お父さんと同じ大学に入学するって 約束をしていたそうだから。 周りのみんなだって 彼女の努力を認めていて、 絶対お父さんと同じ大学に 合格するだろうって信じてた。 もちろん合格はした。 でも……入学する事は出来なかった」 雪美の母だという女性が 顔を手で覆って嗚咽を漏らし始めた。 「7年前の受験日も大雪が降った。 試験が終わって寮に戻る途中 スリップした車がガードレールに 突っ込んで来て。 私は……雪美さんからの報告を 聞く事はなかった。 雪美さんは亡くなった」 「オシャレや友達との楽しい事 全部封印してあの子は頑張ってたんです。 頑張るだけ頑張って 合格した事も知らず逝ってしまった。 即死でした」 こんな事って……。 雪美のお母さんの言葉は 嗚咽でかき消された。 アタシはぼんやりとした頭で 窓の外に目をやった。     
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