104号室

1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

104号室

都内でも屈指の進学校である我が校は とある場所にひっそりと建つアパートを 寮としていくつか借り上げている。 勉強に集中させる為 入試の6ヶ月ほど前になると 受験生達をそこにブチ込む。 ミンナが楽しい夏休みを満喫している頃。 8月もなかばに差し掛かる頃だ。 ナーバスな受験生が家にいる事で 我が子の体調面や精神面を気遣ったり 栄養面を気遣ったり プレッシャーを感じる必要がなくなるから 保護者達は皆大歓迎だ。 大手を振るって我が子を送り出す。 学校と親はタッグを組んで 受験生に最後の追い討ちをかける というワケだ。 学校側は同じ志望校を狙う2人に 六畳部屋を1つ提供する。 部屋割りはくじ引き。 よりによってアタシは一番古い物件の 104号室に入れられる事が決まった。 部屋割りの拒否権は始めから、無い。 建物が古いのはモチロンの事 陽の当たらないジメジメした1階の部屋。 狭い部屋には、背中合わせの勉強机と 二段ベッドしかない。 暗い。 部屋全体が灰色がかって見える。 よどんだ気持ちを盛り上げようと 入寮前日にアタシは ピンク色のハート型のクッションと 白いテディベアを持ち込んだ。 ……入寮する日、無くなっていた。 104号室に足を踏み入れたら クッションもテディベアもどこにも、ない。 何故だかダルマが……いる。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!