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困ったように形の良い眉をよせる男を見る。ざまあみろと少し笑い帰ろうとした時、月明かりに照らされてた我の姿が川に映る。
枯れ木色の髪に白い花や花びらがまぶされていた。甘い匂いがして力が抜けそうになる。
これは邪鬼を追い払う桃の花。通りでうまく力が入らないわけだ。
それらを払い落とし、急いで主人の元へ逃げ帰った。のだが家の門をくぐった瞬間に鼻につく桃の花の匂い、庭に払い落としたはずの花びらが舞い散っている。異常に気づいて門から出ようとしたとき、後ろから抱きすくめられた。
「ねえ、待ってよう、お前に話があるんだ」
「ヒッ」
今までで一番近く強い匂い。息をするのにも喉が震える。それに追い打ちをかけるように男の手が喉にかかる。
「今から聞くことは全部答えてくれよ」
今、我の命はこの男の手に委ねられている。言うことを聞かねば、手折られてしまう。
「君は何者」
我は邪鬼である。
「誰に作られた」
この屋敷の夫婦。
「なぜ君は作られた」
それは、姫君を呪うために。
「なぜ、姫君を呪う」
そう聞かれ、急に頭がはっきりする。そうだ我はあの姫君を呪いたかった。姫君は愛し子の命を落とすほどの恋をさせた。だから愛し子の父母は愛し子の遺髪を我の根元に埋めて願ったのだ。
あの姫君も一緒に黄泉へ連れて行ってと
やらねばならない。それが我が作られた理由なのだから。
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