邪鬼は桃の花から逃げられない

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
この男から離れようと体に力を入れた。しかし、男は慌てずにむしろ強く力を入れられた。あまりの強さに口から悲鳴が出る。しかしそれは直ぐに終わった。なぜなら我の口に男の口がくっついていたのだ。口吸いをされている。 ドロリと熟れた桃の味がする唾液が脳天を突いてくる。なんだこれ、頭が回らない。力が入らない。ダラリと手足がしおれたみたいに動けなくなった。 揺らぐ視界の端に私の本体である枯れ木が見えた。あれに触れたら私はきっと正気に戻れる。そう思って必死に手を伸ばすが、掴まれてて口吸いを続けられる。その内息苦しくなり、我は気を失った。その直前に男は言った。 「君は本当に忘れてしまったのだね。君は本当は邪鬼ではなかったのだよ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!