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桃の花は邪鬼を捕まえた
「私は黄泉比良坂のふもとに根を張る桃の木の精。そなたらの息子からの伝言がある。
そなたら二人は長生きしてくれ。姫君は姫君の寿命があるから、それまで待つよ。だそうだ」
この家の者の夢枕に立ち、かの者が伝えたかったことを言った。
これで良い。これで彼らはもう君を呪いの根源にしない。
もうそろそろ、君も、ここに戻ってくるはず。だから表に出ておこう。
君を待っている間、桃の木の枯れ木を見つけた。長く枯れたまま置かれていたのか、腐り、虫に食われてもう少しで倒れそうだった。
ああそうか。君は桃の木の精としての生を終えていたんだね。
なら君をなおさら連れていかなければここにいては、君はきっともう君ではなくなる。
気絶した君の髪を撫でる。
私と同じ綺麗な白だったのに。
おかしいな君と私は同じ枝で育った桃の実であったのにどうしてこうも違うようになったのだろうね。
邪鬼を祓う桃が邪鬼になってしまったんだ。
他の桃の精たちは君を消すために探している。だから君を黄泉へ連れて行く。
あそこは清い者は近づけないから、君を守ってくれる。
翌日、その家の庭から桃の枯れ木は消えて、代わりそこらじゅうに桃の花びら落ちていたらしい。
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