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頬に触れるシーツがひんやりしていた。
『もう消すよ』
サラがそう言って、明かりを消した。静かで優しい闇に包まれた。
窓を開け放してあるから、風が入ってくる。だから、暑いといえばそうだけど苦にはならなかった。枕に耳を押し付けると、色々な音が聞こえる。
川の流れる音、風が木々の間を抜けていく音、掌から石がこぼれる音、ページがめくれる音、それからくすくす笑う声。
ミルはさっきの薬の不味さなんてすぐ忘れた。
密やかな時間の中。
ミルがほっと息を吐いて、そろそろと手を動かしてシーツのさらりとした手触りを楽しんでいると、かちりと冷たく硬い感触にぶつかった。
サラの首飾り。緑色の丸い石を金鎖でつないである。サラの持ち物の中で、ミルが羨ましいと思う内の一つ。そちらを向くと、暗闇に慣れた目にこちらを覗き返す二人の自身を見た。自分はいつもこんな顔をしてサラを見つめているのだろうかと彼は思う。
『ミル?』
『ずいぶん前から…最初から持ってるね、それ』
『いいえ』
青白いシーツの上を、溜息みたいな囁きが返ってきた。いいえ?
『拾ったか見つけたの?』
『いいえ』
『…?』
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