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「なあ、君はなんでこんなとこで泣いてんだ?」
しんとした落ち着いた声が落ちてきた。
温かみはないが、さりとて冷ややかでもない。
ぼうっと火照った頭に問いがころんと転がってきた。
なんで。なんで?
しばし固まった後、小さく肩を震わせながら随分と馬鹿で正直な返事をした。
「わ、わから、ない、の」
らしくない台詞。
声の主は笑いも呆れもしなかった。
「分からないのか。そうか。それは、とても悲しいね」
声の主は続けて話すでもなく、さりとて立ち去るでもなく、おもむろに向かい側のブランコに座った。振り子の法則を利用した遊具。用途は違えど、古くは紀元前から存在するという。
座席部分のボタンで好きな高さに調整すると、片足を乗せ膝に腕を置いた。
そのまま頬杖をつきじっと彼女を見つめた。
長い沈黙と視線に耐えきれなくなって彼女はぼそっと聞いた。
「いつ、ま、で、そこに、い、いるんですか」
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