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幼いころは双方が想うことを完全に理解することができた。
手や耳やほほなど、体をふれあわせるだけでよかった。思考という潮は瞬時に互いへと流れ、熱のあたたかさを伴って心にひたひたと打ち寄せた。
そのころ彼らは言葉と、言葉ならざるものを用いていたのだろう。
それは熱い皮膚のふれあいであったり、見つめあう瞳の奥底に見出す輝きであったり、弾んだ息をしずめやがて無言のうちにぴったりとそろう呼吸の音であったりした。
言葉にしない約束。言葉に変えて意識のうえに昇らせたら、泡のようにぱちんとはじけて消えてしまう、と恐れてでもいるかのような頑なさ。
ミルのことでサラが知らないことはなく、サラのことでミルが知らないことは、そう、たったひとつを措いてなかった。
ミルが秘密について思うとき、それはいつも緑の石に象徴される。
7歳になった夏の日のことだ。
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