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貯蔵室に行って梯子に登り、棚の各段から二つずつパック入りの食品をとる。主食と、肉と、野菜、あと水。たまに薬とか、一番下の段の柔らかいゼリーも。貯蔵庫はものすごく大きくて、いくら食べても向こう100年くらいはなくならないみたい、と彼は思う。
100年なんて幼い二人には想像できないだろうに。
戻ってサラと一緒にお祈りをする。
「かみさま」?ってなに?でも本で習った文句を唱えないと。少年はこの単調な詠唱にいつか信心が添うものだろうかと訝った。
終わったら、食べ物をぴっちり覆っている膜の袋を取り去って中身を頬張る。いつも通り美味しいと思う。
窓の外では満天の星がまたたいている。
『ねえミル、今日分かったんだけど、海の水は湯気になって空にのぼったり、雨になってまた海に戻ったりするんだって。そうして陸地にも水を届けてくれるのよ。それとねえ、海の水はお塩が溶けているからしょっぱいのよ』
『へえ、てっきり巨人の口から流れ出た水が溜まってるんだと思ってた。ほら前に読んだ話に出て来たでしょ。海ってどれくらい大きいのかな。…ちょっとだけ見てみたいかも』
『巨人のはなし?』
『そう』
それは中国という国の昔話で、深刻な旱魃に見舞われた村・黒底壩の若者が水を求めて旅をし、水を生じる宝の石、水珠を得る話。
多くの敵と戦い、様々な苦難の末に石を手に入れた若者は、湧き出す水のあまりの冷たさに手がしびれ、慌てて石を口にふくむ。すると尽きることなく湧く冷たい水に彼は気を失う。
再び目覚めたとき彼は巨人になっていたのだった。
巨人となった彼は故郷にたどり着き、その身を横たえて口を開けると、清らかな水が流れ出し再び大地を潤したという。確か雲南省の少数民族の伝承だ。
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