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だんっ!
高々と飛び上がった実咲の両足は、そのまま白い天井に着地する。
……いや、天井に両足がついた状態を着地と表現して良いのかどうかはわからないけれど。
『日光』を浴びることで身体能力が跳ね上がる能力者。
先日の体力テストでは封じられてしまったようだが、晴天の真昼において、たとえ室内であろうとも実咲の肉体能力は強力らしい。
「笠音も麻里亜も、みいんなうざいっ!」
逆さまの女子中学生が吠える。
……身体の向きが逆さまになれば当然スカートもめくれあがるけれど、実咲はどうやら黒のスパッツを履いていた。パンツはちゃんとガード済み。
「……相変わらずはしたのない方」
麻里亜は天井を静かに睨む。
いくらパンツをガードしていようが、一人のお嬢さま系中学生としては実咲の挙動に物申したいらしい。
キリキリ、キリキリと両手の糸を張りながら。
「来られるものなら——向かってくるが良いですわっ!」
麻里亜の身体から紡がれた糸、糸から形成された操り人形が三体。
操り人形たちは一斉に実咲へ襲いかかる。同時に麻里亜も自身を守るべく。糸網で防壁を張り巡らせるんだ。
……うわ〜、地味にキッツい攻撃するじゃんこの子。
糸に絡まって動き封じられるのも面倒だけど、だからって躱しつつ本体を直叩きすれば、あの防壁の強度的に身体がぶっつん切れちゃうと思うんだよね。
朝に購買で宣言していた通り、麻里亜は間違いなく実咲を殺しにかかっている。あたしはテクニカルな麻里亜の攻撃に、ガラス越しでも感心しっぱなしだった。
……で、どうする?
どうするんですか実咲ちゃん?
「舐めんなっ!」
実咲は天井を踏みつけ、斜め垂直下に落ちていく。
操り人形たちを完全に無視し、頭から防壁へ突っ込んでいくのだ。
——やっぱり、彼女たちの攻防はあたしみたいな『無能力者』の尺度で観戦しちゃあいけない。
制服がビリビリに裂けてしまおうとも、腕に糸がギリと食い込もうが構いやしない。
実咲は右拳を振り上げ、自身から溢れる血液ごと防壁をぶち抜いた。
右拳はそのまま麻里亜の顔面へ、ただの一撃で届いちゃうんだ。
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