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第3話(中)
竹島麻里亜と三都実咲——
女子生徒二人が熾烈を極めるであろう戦場に選ばれたのは、なぜか購買前の廊下だった。
四時間目が終わるチャイムが鳴ればまもなく、廊下にぞろぞろとギャラリーが集まってくる。
十二時二十分過ぎ、お昼休み。
いつもなら購買が一番賑わうはずの時間だというのに、今日賑わっているのは店内ではなく店外だ。
あたしはカウンターから、窓越しに勝負を見守っている。
……能力者同士のバトルを拝むのって、この中学を卒業してからは初めてなんじゃないだろうか?
「待て実咲!」
すると、対峙する二人の間に割って入ったもう一人の女子生徒がいた。
……おおっ?
購買の常連にしてあたしの最推し——笠音ちゃん!
学校指定の制服をきちんと着込んだ優等生が、双子の妹を引き留める。
紺色のブレザー、その襟まで伸びる黒髪にあたしがガラス越しに見惚れていると、笠音は叫んだ。
「校内で暴れるな! 暴れるならグラウンド出てからにしろ!」
……おお。
優等生の格好で、不良がよく主張しそうな「表出ろや」理論。
「肥料バーはちゃんと食べたか? 準備運動はしたか? いきなり暴れると貧血起こすか明日が筋肉痛だぞ」
…………おお。
笠音ちゃん、お姉ちゃんっていうか、リングに上がる前のプロレスラーのマネージャーかコーチか何かかな?
てっきり仲裁するために割り込んだのかと思いきや、どうやら笠音には二人の喧嘩を止めるつもりはまったくないらしい。
能力者たちが集う無法地帯の校風にいよいよ慣れてしまったか……とあたしはちょっぴり切ない気持ちになった。
そんな世話焼きな姉を実咲は鬱陶しがったのだろう、
「ああ〜〜〜もう、うるっさい!」
駆け寄ってきた笠音の手を乱暴に払い除け、勢いのままに白い上履きを強く踏み込んで。
——天井に届く高さまで飛び上がった。
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