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第二話 新人女性教師の告白
それから少しして何となく敦が授業をしている校庭を窓を開けて眺めてみる。
「ほら、そこ、しっかり動け」
「はい」
一階のカウンセリング室まで敦の声が聞こえてくる。春だというのに半袖で授業を行う敦は何だか輝いて見えた。
「瀧澤先生」
後ろから誰かに声をかけられて振り返る。するとそこに居たのは今年からこの高校に赴任して来た咲宮先生だった。
「咲宮先生、どうなされたんですか」
「瀧澤先生に会いに来たの。それより、私の事は杏奈で良いと言ってるのに」
咲宮先生は上目遣いで谷間を強調させるような格好をしてみてくる。
「ははは、何言ってるんですか。ご冗談を」
「あらやだ、冗談なんて言ってないですよ。私はいつでも本気です」
そう言って近寄ってくる。俺はそういうのは良いですってと言って離れようとする。
「大好きよ、瀧澤先生。確か、ここの高校は教員同士の恋愛は自由でしたわよね。私、瀧澤先生の事、一目惚れしたんです」
腕を掴まれてしまった。
実は咲宮先生に告白されるのは初めての事ではない。
彼女が赴任して来た日の昼休み、たまたま生徒で賑わっていたカウンセリング室に来て突然告白された。その時は流石に動揺して頭を抱えてしまった。そしてその事は全生徒、教員共に知られてしまった。もちろん、里桜も知る事になり、その日の夜は嫉妬深い里桜に部屋に連れ込まれ、圭吾さんは私のなのに。私はこんなに我慢してるのにといつもより多めに吸血されてしまい体力的に大変だった。
「はいはい、若いんだからこんな甲斐性無いおじさんはやめておいた方が良いですよ」
「瀧澤先生はおじさんなんかじゃないです」
掴まれている腕を優しく離し、お世辞でもありがとうございますと言って離れる。
「仕方ないですね。今日はこのぐらいでやめておいてあげます。だけど、瀧澤先生。覚えておいて下さいね。絶対私の事、好きって言わせて見せますから。それじゃ」
咲宮先生はカウンセリング室を出て行った。
彼女は何処か里桜と似ている所がある。はっきりと何処がと聞かれると困ってしまうが、何となく二人共、妖艶で魅力的な女性だ。里桜は吸血鬼と人間のハーフだからと理由はわかるが咲宮先生は何故なのかがわからない。
身体のラインを強調させるようなスーツを着ているからなのか、それとも違う理由か。
そんな事を考えながら誰も来ないカウンセリング室で書類や本の整理をして過ごした。
「さて、そろそろ帰るとするか」
放課後、白衣を脱ぎスーツの上着を着る。鞄を持ち、里桜の様子を見てから帰ろうと職員室に向かう。
ー続くー
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