誇り高き猫として

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 三十分ほどスクールバスに揺られて学校に着くと下駄箱で上履きに履き替え教室へ行く。同じアメリカンショートヘアのシャーロットに声を掛けられた。 「ジェームス、今日は部活さぼったの?」 「さぼったんじゃないよ。昨日食べたぶりが古かったみたいでさ、腹痛だよ」  この高校には運動部が陸上部と体操部、水泳部しかない。野球やサッカーは猫人にはできない。ジェームスは陸上部で短距離の選手だ。五十メートルを三秒六で走れる。もちろん走るときは四つ足だ。靴も履かない。 「エミリーが心配してたんだよ。ジェームスに避けられているんじゃないかって」  同じ学年で陸上部のマネージャーである白猫のエミリーには半年前の夏に告白されている。ジェームスは恋愛感情を誰にも持っていないので友達から始めようと言った。 シャーロットはエミリーの幼いときからの友達だ。 「なんなら聴診器をあてて腹の音を聴いてもいいぞ。ぐるぐる、ぐるぐる、嵐の前みたいに鳴ってるから」 「薬は飲んだの?」 「いや、腹痛(はらいた)なんてものは原因が体内から出ちゃえば治るんだ。スクールバスではきつかったけど、嵐はほとんど治まっているよ。で、俺はエミリーにもこの言い訳を言いに行ったほうがいいかい?」  シャーロットは口元に笑みを浮かべ、ジェームスの肩を叩いた。
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