2人が本棚に入れています
本棚に追加
五識さんに掴みかかろうとする三枝さんを落ち着かせたあとで、私は気になったことを訊ねてみることにした。
「あの、四間さんは二舘さんとはなんの関係もなかったんでしょうか」
私の質問に四間さんは一瞬、瞳の奥に恥じらう乙女のような煌きを映した。四間さんは遠い目をしてポツリと洩らす。
「あの夜は……、あの夜は何もなかったのザマス……」
やってんなー。こいつも二舘とやってんのなー。どれだけあの男は節操がないんだ。危うく私もこの人たちとシスターズにされるところだったことを思うと、こう言ってはなんだけど早めに死んでくれて良かったとさえ思えてくる不思議。タイムリーランデブーしなくて本当に良かった。もうイケメンは全員私の敵だ。ゴッド イズ デッド。神は死んだのだ。しかし、こうなってくると一さんと私、それに刺殺さん以外の全員に二舘さんに対しての殺害動機がありそうだ。私は一さんに訊ねる。
「一さんはもう犯人が誰だか分かっているんですよね?」
一さんは自分の顎を触りながら頷く。
「もちろん。僕は謎を解く以外は何もできない人間だからねー」
と、変わり者の名探偵のような台詞を恥ずかしげもなく口にする。一さんのこういうところは好きだ。もちろんそれ以外は嫌いだけど。
「残念ながら犯人は名乗り出そうにもないようですから、今から僕がその方を名指しさせていただこうと思います」
一さんの言葉にメンバー全員が息を飲むのが分かった。時が止まったように感じる。柱時計の秒針を刻む音だけが、この世界が歩みを止めていない証拠。それほどの静寂だった。一さんがゆらりと腕を水平に上げる。その指先が一人の人物を指し示そうとしている。
最初のコメントを投稿しよう!