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「犯人は――「やめろおおお!」」
突然部屋の隅で膝を抱えていた刺殺さんが絶叫して立ち上がる。突然のことに皆唖然として刺殺さんに注目する。それは一さんも同じだった。
「さ、刺殺さん? どうしたんですか急に?」
一さんが少し驚きながら訊ねる。一さんの呼びかけが聞こえなかったのか、刺殺さんは「もう茶番はうんざりだ!」と怒鳴った。次いで、
「普通ぱっと見と名前で俺が一番怪しいって分かるだろうがあああ!」
とブチ切れられた。もちろん一さん含めたこの場の全員が、だ。全員が刺殺さんに叱られた。
「はっ! ま、まさか……。嘘ですよね? 刺殺さん……」
思わず私が呟くと、刺殺さんは、「なんで事ここに至って嘘だと思うんだよ! 俺お前にそこまで信用されるほど関係値築けてねーだろうが! 馬鹿か! というかこんな顔中包帯だらけでバカンスに来るヤツなんて居ねーだろ! 居るか? 居ねーだろうが! お前ら全員頭にポップコーンでも詰まってんじゃねーのか!?」
そう言って刺殺さんは頭に被ったハットを床に叩きつけたかと思うと、顔に巻かれた包帯をシュルシュルとほどき始めた。私たちは固唾を呑んで刺殺さんの素顔が現れるのを待つ。最後の包帯が静かに床に落ちた。私たちは刺殺さんの顔を見るなり絶句した。その顔は――
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